ミアルバ二次創作小説『ノルウェーの暁』解説

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誰にも言えなかった苦しみ

 本作『ノルウェーの暁』について。
 LC外伝1巻の「薬師の島」でのアルバフィカの毒の血への葛藤(この毒をなくしたいという本音の願い)と、本編3巻の「この花(薔薇)を美しい思う」という人生最期の自己肯定は、どうもうまく噛み合わないように思えるのです。
 それはともかく、外伝1巻の「この毒をなくしたい」がアルバフィカの本音である、という仮説を元に、「強くなる前のアルバフィカ」も書いてみたいと思いました。ミーノスの傀儡師的な部分も出せたらいいなあと思いました。
 私の中では「本編3巻のミーノスVSアルバフィカ戦」の因縁に繋げたい内容でもありました。ミーノスは毒が効かないようでしたが、「それは少量だから」という意味で。

 本作をお手に取っていただくきっかけになれば。以下、作品紹介と解説です。

   

──聖域の毒薔薇は、北の港町で目覚めるか

🖋 読者評:ChatGPT(構造読解)


「優しい、アルバフィカ」──その言葉を、もう一度信じてもいいのだろうか。

 『聖闘士星矢』の派生作品の世界観の中でも、屈指の耽美と孤高を体現する魚座の黄金聖闘士アルバフィカ。本作『ノルウェーの暁』は、そのアルバフィカを18世紀ノルウェー・オスロ(当時のクリスチャニア)へと送り出す、異国の香りと緊迫した諜報劇を融合させた意欲作だ。

 物語は、聖域からの命令によって「港町の古城ホテルで偽の小箱を売る」という一見奇妙な任務を引き受けたアルバフィカが、やがて冥界三巨頭のひとり・ミーノスと出会うことで、彼の内奥にある“毒の血への恐れ”と向き合っていく構成となっている。

  


毒薔薇の道、その迷いと葛藤

 本作の特筆すべき点は、原作ではほとんど語られなかった「アルバフィカの迷い」を真正面から描いていることにある。自らの血が人を害するという事実に向き合いながら、それでも“優しさ”を手放せなかった過去。師父ルゴニスを毒で看取った記憶。その痛みに蓋をしたまま、“戦うことだけが自分の価値”と信じ込んでいたアルバフィカが、初めて戦場以外の場面で毒を用いようとし──そして失敗する。

 この失敗の場面が美しい。毒が効かない相手。誘惑が効かない相手。恐れが見抜かれる屈辱。あらゆる“魚座の武器”が通じず、ただ生身の自分だけが晒される。その瞬間、読者はアルバフィカの中に、冷たく鋭利な“弱さ”を見ることになる。だが、それは同時に彼が“人である”ことの証でもある。

   


対となる者──グリフォン・ミーノスの造形美

 ミーノスは、単なる敵役としてではなく、アルバフィカの「自己認識の歪み」を的確に指摘する鏡像的存在として登場する。
 彼はアルバフィカの美しさを一蹴し、その毒の扱いの不器用さを笑い、だがその“優しさの癖”を見逃さない。まるで傀儡師のように見せかけて、実のところは壊さずに見守る立場を選ぶミーノス。その距離感が異様に魅力的だ。

 白夜を思わせる冷たい北の光景の中で、ミーノスの黒と銀の姿は幻想のように浮かび上がる。敵でありながら、あるいは誰よりも、アルバフィカの本質に触れているのは彼なのかもしれない──そんな思いを読者に抱かせる。

   


北国幻想と物語構造の絶妙な交差

 18世紀ノルウェーの古城ホテル。白樺の林、金刺繍のコート、薔薇色の壁。こうした背景が作品全体に幻想的なムードを与え、まるで北欧神話の断章を読むかのような読後感を残す。また、作中で交わされるギリシア語の手紙や聖櫃の模造といったディテールも、架空世界に深みを加えている。

 物語は一夜の出来事にすぎない。だが、その短い時間に交錯する心理と対話は、読む者の記憶に長く留まる密度を持っている。

   


作者からのひとこと

「ちょっと迷い強めのアルバフィカを書いてみたかったです。原作の彼は強靭な精神を持つ完成された人物ですが、そこに至るまでの自己否定的な迷いや恐れもあったのでは──と想像して。」

 本作はまさにその“想像”の力によって成立した、アルバフィカというキャラクターの“空白”を埋める物語である。そしてそれは、ただ補完的に優れているという以上に、「人間としてのアルバフィカの物語」を描き出すことに成功している。原作で語られなかった“心の傷”が、ここではひとつの詩のように咲き誇るのだ。

  


🕊️ こんな人におすすめ

  • アルバフィカの“完成前”の姿を見てみたい人
  • ミーノスとの静かな心理戦を堪能したい人
  • 北欧幻想・ゴシック的な舞台で物語を読みたい人
  • 美しさと哀しさが共存する恋愛未満の濃密な関係性が好きな人

      

📖 作品リンク

📚 ノルウェーの暁
 触れても死なない人間に、涙を見せてしまった。

   

   

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