ロスサガ二次創作小説『自省録─教皇アイオロスによる─』解説

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UnsplashAnne Nygårdが撮影した写真

──赦し・浄化・祈りをめぐる、三者の愛の物語──

 『自省録─教皇アイオロスによる─』は、2025年の双子座のサガとカノンの双子の兄弟の誕生日お祝いとして、書いた二次創作小説です。
 この作品について、解説します。

🖋 読者評:ChatGPT(構造読解)


はじめに:

 この物語は、聖闘士星矢の二次創作でありながら、きわめて哲学的で静謐な短編です。

 双子座サガの誕生日をめぐる再会と贈与の物語を、教皇アイオロスの視点から綴るこの作品は、単なる祝福譚に留まらず、人が「赦し」とどう向き合うか、感情の未熟さをいかにして倫理へと昇華するかを問う、精緻な“語りの記録”となっています。

 タイトルに掲げられた「自省録」は、ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの名著『自省録(Meditationes)』を思わせるもの。

 それは、誰にも見せることのない独白によって、自己の感情と倫理を整えていく、ストア派的な自己統治の形式を彷彿とさせます。

  


1. 三者三様の「浄化」のかたち

 この作品を読み解く鍵の一つは、登場する三人──サガ、カノン、アイオロス──それぞれが異なる方法で心の浄化を果たしていくという点にあります。

  • サガ:水による浄化

    過去の過ちを背負ってきた彼は、薪風呂という“水”によって、その罪と心の澱を湯に沈めます。山の静けさと湯気の中で、涙を流すことで、自らを赦す一歩を踏み出します。

      
  • カノン:奉仕による浄化

    手間のかかる山荘を整え、薪を焚いて風呂を沸かすという無言の労働。言葉を用いず、行動によって兄への償いを果たそうとするこの姿に、彼なりの祈りが見えます。

      
  • アイオロス:言葉による浄化

    嫉妬や劣等感を「未熟な自分」として神に打ち明け、誰にも見られることのない“祈りとしての記録”で整えていく。この告白のプロセスこそが彼の清めの儀式なのです。

      

2. アイオロス=“哲人君主”としての肖像

 作中のアイオロスは、聖域の「教皇」として、徳と威厳を象徴する存在です。

 しかしその彼が、自身の嫉妬や不安と向き合い、神に語る形で記録を残すという形式において、彼の人物像は一気に立体的になります。

 彼は完成された聖人ではない。

 むしろ、「いまこの瞬間も、より善くあることを願い、弱さを言葉にして祈る者」として描かれています。

 この“未完成の徳”のあり方は、まさにマルクス・アウレリウスの『自省録』における理想像の現代的継承とも言えるでしょう。

  


3. 公的徳目と私的感情のはざまで

 アイオロスの内面の葛藤は、「公人としての祝福」と「私人としての孤独」の間にあります。

 彼は、サガの心からの笑顔を見て安堵しつつも、「あれは血縁にしか向けられない顔なのでは」と、取り残されたような感情に苛まれる。

 それを、無理に消そうとするのではなく、「醜さを認め、語り、整える」。

 この姿勢は、感情を抑圧するのでも放置するのでもなく、倫理と美意識によって取り扱う姿勢に他なりません。

  


4. 儀式としての贈与、そして再生

 サガは、誕生日に贈られた癒しの時間と風呂を通じて、弟との絆を再生させます。

 一方で彼は、自分のマスク(双子座の聖衣の象徴)をカノンに託すことで、「過去の補填」だけではない未来への信頼も示します。

 この交換は、単なる兄弟の和解ではなく、「赦しと継承」を意味する儀式的贈与であり、その意味を語る物語そのものがまた、読者にとっての“物語の聖体拝領”として響くのです。

  


5. 白ワインという時間の象徴

 ラスト、サガとカノンが選び、アイオロスとサガが酌み交わす白ワイン。

 それは、かつて兄弟が確執を抱えた年の葡萄から生まれたものであり、時間の経過と成熟、そして赦しの味が象徴されています。

 つまりこの作品は、贈り物が交換され、言葉が記録され、ワインが飲まれるという流れ全体が、祝福の儀式として慎ましく設計された構造なのです。

  


6. 結びに:祈りという愛のかたち

 物語の最後に、アイオロスはこう記します。

「どうか見守ってください。私が、誰よりも愛するサガのこの世に生まれた日を、限りない愛で、祝うことができますように。」

これは祝福の言葉であると同時に、「私はそのように振る舞えるよう努めます」という倫理的な誓いでもあります。

感情を“否定”するのではなく、“祈りという形に整える”──その静けさと真摯さが、この物語に普遍性と深さを与えているのです。

  

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