夢と毒のあわいで、自由が選ばれるとき──あまがい
今回は「アルバフィカの女性化」設定と、「舞台を20世紀初頭のパリへ置き換え」して書いた異色作品**『Mademoiselle Albafica.』**のご紹介です。作品概要は「#1」の解説記事をご参照ください。
この記事では#4に含まれる「5.」と「6.」について解説します。
一見19世紀欧州小説のパロディに見えますが、なんとかしてLCのミーノスらしさとアルバフィカらしさを入れ込んで、別の話に仕立て上げるということをやったつもりです。「もはや一次創作でやるべき」くらい改変が多いものの、読んでいただくと「二次創作でないと、意外と成り立たない」という面が見えて来ると思います。
貴族の仮面の下にあるもの
🖋 読者評:ChatGPT(構造読解)
この章では、アルバフィカがようやく職場であるオルレアン博物館へ復帰し、受賞のささやかな祝賀ムードに包まれる一方で、新たな事件が彼女の前に現れます。その名はモルフィア大公オネイロス──美術機関に多額の寄進を行う資産家であり、彼の「夢」を中心に据えた世界観は、アルバフィカの現実的で批評的な眼差しと決定的に相容れないものでした。
平穏な場所への回帰と、そこに交錯する異物
職場の同僚マニゴルドのあたたかな支援のもと、アルバフィカはかつての日常に少しずつ立ち戻ろうとします。だがその安堵のなかに、新たな異物が混じります──オネイロスとの出会いです。
彼は夢想的で抑揚のない男。批評記事を読んだことを口実に、アルバフィカに接近し、自邸での晩餐会に誘います。その背後には館長イティアの露骨な利害計算と圧力がありました。
「夢」と「毒」──二つの幻想の対峙
オネイロス邸での晩餐会は、夢を愛する者にとっての理想郷であるはずでした。しかし実際には、夢という名の独断的な審美眼と、客人への不誠実な接し方が支配する場所でした。アルバフィカはその欺瞞に気付きながらも、決して感情を爆発させず、自らの「毒」という語りで身を守ります。
オネイロスにとってのアルバフィカは、美の化身であり、夢の象徴でしかなかった。その幻想が打ち砕かれた瞬間、アルバフィカは「地獄の門」をくぐった者として、傷を負いながらも自分の尊厳を守り抜くことに成功します。
真実の伴侶とは──問いの果ての応答
邸を追い出された夜、アルバフィカが思い出すのはやはりミーノス。かつて同じように「毒」を口実に彼を遠ざけようとしたあの時、彼は「それでもいい」と言った。その言葉の中に、ただの恋ではなく、彼にもまた抜き差しならない何かがあったと今ならわかるのです。
傷ついた彼女が求めたのは、語られない痛みを抱えながらも、自分に寄り添い続けた男の手。ミーノスは、法の名のもとに大公を追い詰めるという強引な策を講じる一方で、アルバフィカにそっと語ります──**「もう、ずっと癒されている」**と。
結婚とは何か──自分にできること
「結婚とは、誰のためにするのか」──この問いは、アルバフィカにとってこの物語全体の核心とも言えるものでした。世間体でも、保護者の安心でもなく、まして愛されることへの対価でもない。「癒し合うこと」こそが、二人の関係にとっての答えだったのです。
物語の最後、アルバフィカはミーノスの胸に抱かれながら、もう言葉ではない何かを知ります。そうして馬車は、夜の闇の中を通り抜け、二人が共にある未来へと滑らかに進んでゆくのです。
まとめ 女は言う「私以外、みんなばか」──あまがい
この話の結末は……。
いつも賢いChatGPTを混乱に陥れた#4。ともかくGPTがこの#4の作品紹介や読解に失敗します。何度でも失敗します。原因はよくわかりませんが、GPTはこの結末を読んで混乱したのだろうと。主に主題が骨折していると。
私は、「自由意志において結婚を選ぶ話」「自分にできることがあるから結婚する」というアルバフィカの決断を書きたかったのです。しかし、それにしてはオネイロスが本当にダメな人過ぎて……。
アルバフィカはオネイロスやイティア館長と接するうちに、「みんな、バカ」という結論に達します。そうは書いていませんが、これまでの貴族とのかかわりで、心底そう思ったことでしょう。誰も彼もが自分の都合で権力を傘に着たパワーゲームをしている。倫理だの道徳だの言って婚前交渉の醜聞を負ったアルバフィカを責めながら、水面下ではもっと醜い欲望の行使を誰もが繰り返している。その中で、たった一人の人間がどれほど無力か。
それを噛み締めながら、アルバフィカは、自分を手籠にしようとするオネイロスを機転で退け、しかし怒らせることは回避できず、多少の痛い目に遭いながら彼の邸を脱出します。無様な始末の付け方だと思いながらも、結局ミーノスはこの「ばかたちの群れ」の中で真実のある人だと、アルバフィカは思う。少なくともアルバフィカに対しては──。
自力で困難を克服したアルバフィカは、それを自信にして、結婚生活もミーノスに振り回されるばかりでなくやっていけるだろうと実感します。そして、結婚することにしました。
まあ、うまいことまとまりませんでしたが…。
ヒロインが恋人役に助けてもらう話ではなく、自力で抜け出した後に、相手にようやく「私も結婚したい」と打ち明けるのが、私の好みでした。これを男女の話でやれて、楽しかったです。
この作品に最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
◆ 本文はこちらから読めます(Pixiv)
👉 『Mademoiselle Albafica.』(Pixiv)
美しさの中に沈黙とともに閉じ込められた彼女が、
最後に手に入れたのは、語る力ではなく、選ぶ力でした。
その選択が、愛と呼ばれるなら──ようやく、これは恋物語と呼べるのかもしれません。