「町のパン屋さん」との最初の出会いは、幼稚園生の頃。
調布市の仙川駅の高架の近くにあった「ピーターパン」でした。
ふたつの目の「町のベーカリー」
仙川駅前のベーカリー「ピーターマン」とは、6歳でお別れになりました。
我が家は引っ越しし、新しい町に移り住んだのです。
でも、やっぱりスーパーだけでベーカリーはない町でした。
そんな町にベーカリーがやって来たのは、いつだったでしょう。
検索してみたら、やっぱりもう閉店していましたが、開業してからかなり長い間、地域に愛されたベーカリーでした。
あのベーカリーが誕生したのは、私がその町に引っ越して1〜2年後くらいだったとおもいます。
しかも「ベーカリーレストラン」という名の付いたパン屋さんが登場したのでした。
これはちょっとした衝撃、事件です。
「ベーカリーレストラン」とは
そのお店は、おそらく主軸はその名の通りパン屋さんなのですが、ケーキや洋菓子も売っていて、パン屋さんコーナーの奥にレストランがあるというつくりでした。レストランの特色は「焼きたてのおいしいパンを提供」。
パンがおいしい事は、レストランの魅力としてアピールポイントです。
この頃は、スーパーの食パン以外に「焼きたて」を売り文句にする街のパン屋さんが本当にお洒落な存在でした。
美味しいパンを焼き立てで味わう事自体が、とってもお洒落な贅沢だったのです。
だから、同じレストランでも、焼きたてのパンが食事に付くのは、付加価値が高い事なのです。
ちなみに私はこの「ベーカリーレストラン」に連れて行ってもらった事はありません。
ここでパンを買ってもらった記憶もないのです。
「ベーカリーレストラン」は、おそらく「ピーターパン」よりかなり格調高い路線の高級パン屋さんだったのでしょう。
あくまで私の幼い頃の記憶の限りですが、ピーターパンは洋風といってもウッディな木小屋の系統です。「ベーカリーレストラン」はガラス張りと白の洋館のようなイメージのお店でした。
私がこのお店で買い物をした思い出は、お呼ばれの時のケーキや焼き菓子の購入。
確かオレンジ入りのパウンドケーキを買いました。
お稽古事の先生におよばれしたときに、お持ちしました。
中学生の頃の事です。いつも、我が家にお客様がいらっしゃるとき、持って来て下さるちょっと高価な洋菓子やケーキを、親からいただいたお金でとはいえ自分が買って先生のお宅へお持ちするのは、とても大人びた行動でした。すごくどきどきする事でした。
そして何よりも思い出深いのは、このお店は、やがて私の人生初めてのアルバイト先となる事なのです。
そういう意味では、私は「ベーカリーレストラン」のパンをよく食べました。
まだこの頃はあまり厳しくなくて、売れ残りのパンをアルバイトに分けてもらえたのです。
「ベーカリーレストラン」のパンはとても美味しかったです。
くるみの入ったパン、バゲット…、欧風パンの味を私はこの店で覚えました。ソースの凝った洋風の食卓によく合うパンの事を、教えてもらったのです。
街のパン屋さんは、お土産のケーキを初めて自分で買ったり、初めてのアルバイトや、初めてのファミリーレストラン以外での食事を体験させてくれました。
胸踊る、憧れの大人の世界への入り口だったのです。
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